2026.08.25
2026年9月4日に「藩境のまち」に空き家だった古民家を再生した宿「RITA大川藩境」がオープン。今回は、ここに泊まって楽しむモデルコースをレポートします。

かんな

■「木工のまち」を体感する宿
「RITA大川 藩境」は、福岡県大川市小保・榎津藩境のまちにある、築約100年の古民家を再生した一棟貸しの宿です。
このホームページを観ていただいている方は、この地域の歴史をご存知かもしれません。16世紀から小保八幡神社の門前で開かれた「市」をきっかけに、海運の要所として、船大工や職人達が暮らす町として繁栄。高度な木工技術を活かし、水車や建具などさまざまな木工製品が作られたこと、約400年前の江戸時代には、まちの間を流れる江湖(水路)を境に、西側の小保は柳河藩、
東側の榎津は久留米藩と、それぞれに港や番所が置かれ、造船業や木工業に関わる人々や生活物資を商う賑やかなまちでした。
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この地域では、170棟ほど歴史的建造物が残っていると言われ、建物とまちなみを保存しようと2016年4月にNPO法人「小保・榎津 藩境のまち保存会」を設立。1軒1軒歴史的建造物の所有者をお訪ねし、建物の現状を聞き取りする「町並み見守り隊」や、歴史的建造物を「たてものバンク」として管理し、普段から所有者と交流を重ねるなどの活動を行っています。
この宿ももともとは空き家になるところを、このNPOで所有者から引き取って管理をし、宿として再生することになりました。
NPO法人 小保榎津藩境のまち の取組はこちら
この宿の最大の魅力は、元の家屋の建築、壁、建具など保存できる部分は残して活かし、新しくする部分にも近隣の筑後地域のアンティーク家具や建具、以前に使っていた大川組子などが利用されていることです。この家や地域の歴史をそのまま体感できるのです。そのうえで、檜の風呂やシャワー、キッチンは最新で、使いやすいのです。
また、床の間や部屋を彩るオブジェは、大川の職人が手掛けた木の温もりを感じるもの。宿に息づく木工の文化そのものを楽しむことができます。



今回は、どんな工夫を施したか、藩境のまちに住む匠で、この宿の建具を手掛けた宮崎建具の宮崎宏樹さんに特別に説明してもらいました。昔のままに活かされた床柱、欄間などと新しい建具の組合せは自然と心落ち着く空間になっています。
宮崎さんはJR九州の豪華列車・「クルーズトレインななつ星」の建具・内装を手掛けてもいらっしゃいます。
宮崎建具 についてはこちら

それぞれの部屋の特徴をみていきましょう。
かんな
かつて船大工が住んでいた家屋で、129㎡と広く、最大6名まで宿泊できます。1階の開放的なキッチンとダイニングがあり、ゆったりと会話を楽しむことができます。2階のベッドルームは2つ、下の庭に面した和室も寝室として利用できるので3グループで訪れてもいいですね。



こびき
家具職人の工房兼住居だった建物で、80㎡、最大4名まで宿泊できます。
低い天井など、昔ながらの日本家屋の造りが残されており、2階のベッドルームの脇にある机でずっと読書ができそう。2階の吹き抜けは落ち着いたアーティスティックな空間にアレンジされています。昔の空気を感じながら、静かに滞在したい人に向いています。



共通して楽しんでほしいポイントを挙げます。
まず、檜のお風呂は、絶対に湯をためて、木の香りを楽しみながら入浴をおすすめします。日常の喧騒から離れて、癒されます。オーバーヘッドシャワーと通常のシャワーと2つ備えてあり、使い勝手がいいです。

そして、レコードを聴きながらの時間を楽しむこと。レコード自体を扱ったことがない人がほとんどだと思いますが、時の流れを感じさせる味わい深い音質は心に響いてきます。

宿の近くに本店があるスペシャリティコーヒーの専門店・あだち珈琲のドリップバックのコーヒーと佐賀の銘菓丸ぼうろをお供に、心からリラックスできる時間を!

■夕食は地元の名店の味をオーダーして
この宿ではキッチンもあるので、自分たちで調理して楽しむことももちろんできます。

でも、一度は夕食をオーダーすることをおすすめします。
大川の寿司店「船頭寿司」の会席料理をお部屋に持ってきてくれます。寿司職人の丁寧な手仕事が感じられる寿司、旬の魚、刺身、天ぷら、酢の物、茶碗蒸し、お吸い物、フルーツなど目にも鮮やかな料理の数々をゆっくり堪能しましょう。
事前に希望を伝えてベジタリアン対応もできます。


■朝食は大川らしい洋食
藩境のまちにある「パリ・モンスリー」のバケッㇳとクロワッサン、「庄分酢」の酢を使ったウフマヨソースのゆで卵やピクルス、フルーツビネガーなど地元の味を楽しめる朝食です。今回は、有明海ののりを入れたスープもありました。大川の建具職人が作った木箱でいただきましょう。
事前に希望を伝えてベジタリアン対応もできます。


【RITA大川藩境】
予約は公式HP
【フロント棟】〒831-0004 福岡県大川市榎津523番地
【客室棟】
・かんな:福岡県大川市榎津588番地
・こびき:福岡県大川市榎津585番地
チェックインは15時~18時、チェックアウトは10時、無料Wi-Fi、無料駐車場、全館禁煙
アクセス
車:九州佐賀国際空港から車で約20分、福岡空港から約1時間10分
電車:西鉄福岡天神駅から西鉄大牟田線特急で約50分 西鉄柳川駅下車、佐賀駅バスセンター行の西鉄バスに乗車(約20分)、「中原高木病院前」で下車、徒歩約15分
■藩境のまちを味わいつくす
この宿がある「小保榎津藩境のまち」は、一周ぐるりと歩けば20分程度しかかからない小さなエリアです。でも、その中に宝箱のように、匠の技や暮らしの営みを感じるスポットが集まっています。RITA大川藩境にステイするときは、このまちも存分に楽しんでくださいね。
(1)旧吉原家住宅
藩境のまちを象徴するのが、この旧吉原家住宅。柳河藩小保町の行政を担った「別当」を務めた家で、主屋と御成門は国の重要文化財に指定されています。主屋は1825年に建てられたと言われています。

式台玄関から続く「三の間」「次の間」「上の間」と続く空間は位の高い客人をお迎えするおもてなしの場。約3メートルの高い天井を持ち、北山杉を使い、欄間や釘隠しなど職人技を随所に感じることができます。土間や住居部分にも太い木材が使われ、往時の暮らしぶりを体感できます。毎日スタッフが出し入れを行っている雨戸の体験は、国内外の方に人気です。

五節句や季節の暦、イベントにあわせた設えも魅力的。今回はちょうど旧暦の七夕にあたる8月7日に訪問。七夕飾りも書き込みました。

ここでは2つの体験ができます。大川組子体験と、抹茶体験です。
大川組子のキットが用意されているので、スタッフの指導を受けながら作っていきます。細かな部品が準備されていること自体に驚きです。これらを組合せてあの精巧な組子ができるのですね。

抹茶はスタッフの指導を受けながら自分で点てて、和菓子と一緒にいただきます。

2つの体験は、事前に予約をおすすめします。
旧吉原家住宅についてはこちら
(2)庄分酢 高橋家住宅
300年以上にわたり酢造りを続ける庄分酢。時間をかけて昔ながらの伝統製法で造られる酢は、まろやかな味わいです。ショップは年末年始を除いてオープンしているので、ぜひ立ち寄ってみましょう。

ここでは酢蔵と大川市指定有形文化財である高橋家住宅の見学を行いました(有料)。
酢蔵では、お酒から酢になる過程や、後継者のみに受け継がれる秘伝の製法を書いた巻物の話、菌の活躍など「発酵」についてのお話をききました。


次に、現在も住居として利用している高橋家にお庭から入り、茶室や和室など日本建築の美しく、細やかな工夫を見学できました。

お楽しみのランチは、270年の町家づくりの建物の中で、お酢を使ったシェフおまかせコースランチ料理をいただきます。前菜、パスタ、メイン、デザートにいたるまで、さまざまな酢が素材の味を引き立てています。高橋家にある歴史ある陶磁器や漆の器なども飾られており、このまちの歴史を感じながら食事ができます。
酢蔵見学などの体験とランチは事前予約制なので、ホームページをチェックしてね。





庄分酢についてはこちら
(3)「藩境のまち」を散策
一周急ぎ足で歩くと20分くらいのコンパクトな「藩境のまち」。でも散策すると足をとめて寄りたいスポットがいっぱい。
ガイド付きツアーだったら日頃は入れないお寺の中や、アンティーク雑貨の蔵が開いたりと特別に見学できるところがいっぱいです。(事前に予約が必要)
ガイド付きツアー はこちら
自由に散策する際のモデルコースはこちら
文化財にはQRコードで多言語で表記されるようになっています。

○中村紙店
1810年頃に創業した老舗で、当初は生活雑貨を扱っていましたが、80年ほど前から襖紙や障子紙、各種和紙を扱う店に。建物は1883年ごろに建てられた入母屋造りの町家で、特に注目したいのが、2023年から2024年にかけて修復された屋根です。残されていた瓦や建築資材、資料を手がかりに、文化財建築の修復にも携わる職人が、昔の姿を尊重しながら丁寧に復元しました。一枚ずつ手作りされた瓦や、家を守る願いが込められた鬼瓦からは、伝統的な建築技術を次の世代へつなごうとする姿勢が伝わります。今回伺った2026年8月現在、当主の中村隆志さんは、NPO法人 小保榎津藩境のまち保存会の理事長を務められ、このまちなみを守るリーダーだということがわかります。
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○藩境もんぺ屋Beta Beta
福岡県南部の筑後地方で作られている、200年以上前から続く木綿織物「久留米絣」。
木綿の生地は丈夫で、使うほどにやわらかくなり、肌になじんでいきます。藍染めを中心とする素朴で美しい柄と実用性を備え、かつては農作業着や日常着のズボン「もんぺ」として筑後地方の人々の暮らしを支えました。ここでは好きな色や柄の生地を選んで、セミオーダーでもんぺやワンピースなどを作ることができます。
店主の三宅浩子さんは、このまちなみの保存活動に奔走し、名物ガイドでもあります。このまちの魅力や暮らしの魅力もあわせて、お話してくれます。久留米絣のコースター作りなどの体験も手軽にできますよ。土日のみのオープンなので事前に確認を。
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藩境のまちにゆったり滞在する2泊3日のモデルコースを作成しました。
Day1
柳川で昼食後に「藩境のまち」へ
14:00ころ 旧吉原家住宅で見学、大川組子制作体験+抹茶体験
15:00ころ 「RITA大川藩境」にチェックイン後 宿で休憩
17:00ころ ゆっくり夕方のまち歩き
18:30 「RITA大川藩境」で夕食(船頭寿司の会席料理)
宿で入浴などゆっくり滞在
Day2
8:30ころ 「RITA大川藩境」で朝食
10:00ころ ガイド付きツアー で日頃はみられない寺訪問など
13:30ころ 庄分酢 ランチ
その後 酢蔵見学、高橋家住宅見学など
15:00過ぎ 宮崎建具店での木の小箱作りor 森田漆店で漆体験 など職人に習う体験
18:00ころ 食事の準備の買い物、キッチンで地元食材を料理してディナー
宿でゆっくりと過ごす
Day3
8:30ころ 自分たちで調理して朝食
10:00ころ チェックアウト 荷物を宿に預けて車やタクシーで周辺観光
風浪宮、昇開橋、清力美術館 など周j辺観光はこちら